《フェイクニュース》「アメリカ人の7%はチョコレートミルクが茶色い牛の乳から出てくると思っている」は間違い

このニュースが広まったのは、6月1日にアメリカのネットニュースが報じたことに始まる。記事によると「アメリカ酪農イノベーションセンターという酪農団体が、4月に18歳以上の1000人に対するアンケート調査をネット上で実施したところ、43%がチョコレートミルクがどこから来るか分からないと答え、7%が茶色い牛から出てくると回答した」とある。

 

 

これを6月15日にワシントンポストが取り上げたことをきっかけに、CNNを含め様々なメディアで取り上げられた。(その後6月21日にはアメリカのジャーナリストによってこのニュースをデバンクし検証した記事が書かれている。)

 

日本では、7月5日に産経新聞ワシントンポストとCNNの記事を引用する形で

『米国人の7%「チョコレートミルクは、茶色の牛が乳から出す」 知的格差も急拡大』とネットで紹介し、それをいくつかのまとめサイトが掲載し一部ネット上で拡散された。

 

ネット上の反応は様々で、たとえば、

・アメリカ人はジョーク好きだからふざけて回答した

・記事の通りアメリカの教育格差は大きく知的格差も広がっている

・イチゴミルクはピンク色の牛から出てくるのか

などなど。

 

その中でまさに核心をついて秀逸だったコメントがこれ。

「選択肢の中にあるんだから俺だって切り身が泳いでるって答えるぜ」(痛いニュース コメント欄146)

このニュースの正体はこの一言に尽きる。そもそも選択肢含めアンケート自体が適切に行われてはいなかったのだ。

 

ではアンケートでは具体的にどのような質問がなされたのか。この調査は酪農団体がマーケティング会社に依頼して行ったものだが、酪農団体マーケティング会社のサイトを調べてもアンケート調査の詳細は掲載されていない。

 

しかし、この酪農団体の広報担当者がアメリカ公共ラジオNPRに出演した際、アンケートでどのような質問をしたかを語っており、それによるとアンケート調査は以下のような質問文と選択肢だったようだ。

 

Q. チョコレートミルクはどこから「来る」か?(Q. where does chocolate milk come from?)

1. 茶色い牛

2. 白と黒の牛

3. 分からない

これでは誤解されるような結果が出るのも仕方がない。わざわざ説明する必要はないかもしれないが、この設問における問題点は2つある。

 

1つ目は質問文に『チョコレートミルクがどこから「来る」か?(come form)』のように、あたかもチョコレートミルクが加工されずにそのままの形で出てくるかのような表現を使っていること。これは誤解を招きかねない。

 

2つ目は、質問の選択肢として「牛乳・チョコレート・砂糖」という正しいものが含まれていないこと。これでは正しい選択肢を選びようがない。調査結果では「43%の人が分からないと答えた」とあったが、この数字は選択肢に困って「分からない」を選んだ結果だろう。

 

おそらくアンケートで答えさせたかったのは、「Q.チョコレートミルクに使用される牛乳は、一般的にどの種の牛のものか? A.白と黒の牛(ホルスタイン種)」ということだろう。であるならば、そのように質問文と選択肢をつくるはずである。それをしないのはわざと誘導しているとしか考えられない。

 

さらに付け加えると「茶色い牛からチョコレートミルクが出てくる」というのはよくあるアメリカン・ジョークの類である。検索すれば以下のようなジョークも出てくる。

Q: なぜヤツは茶色い牛を買ったの? A: チョコレートミルクを手に入れるためさ。

(Q: Why did the blonde buy a brown cow? A: To get chocolate milk. )

Cow Jokes - Bull Jokes

 

 つまりこのニュースは、アンケートでわざと選択肢にジョークを利用し、出てきた結果から話題作りを行った、というのが正確だろう。なのでこのアンケート調査から「アメリカ人の7%はチョコレートミルクが茶色い牛の乳から出てくると思っている」と導くのは誤りである。

 

f:id:monsieuryoshio:20170814210712j:plain

 

https://www.flickr.com/photos/76969036@N02/16254741301 (クリエイティブ・コモンズ CC BY 2.0)